「……分かった」

その言葉に顔を上げると、ナツキさんと目が合った。その表情は明るいものではないけれど、彼は言葉を続ける。

「どのみち、舞台は進行中。今更止める事は出来ない。
ならばツバサの策に賭けてみるしかあるまい」

ナツキさんの言葉に、周りに居た裏方の人達も納得する様に頷く。

「見せてもらうぞ、ツバサ。お前が俺のバッジを譲るに等しい、夢の配達人か」

ナツキさんはそう言うと裏方の人達に声を掛けながら、反対側の舞台裏に控えている人達に作戦が変更になった事を伝えに行ってくれたようだった。


……。
分かって、くれた?
みんな、分かってくれたんだ……!

みんなが持ち場に戻って行き、再び舞台に力を尽くす姿を見て、ホッと力が抜ける。
安心から足元がフラつくと、背後から支えてくれるように誰かにフワッと包み込まれた。

「!っ……あ。ッ……ツ、ツバサ?」

名前を呼ぶと、更にキュッと抱く腕に力が込められる。胸がドキッと弾んだ。
相手は同性のツバサなのに、(おう)の姿だからか何だかおかしな気持ちで……。良い匂いもするし、悪い事をしている気持ちになってくる。
ドキドキしながら、チラッと顔だけ後ろに向けると……。

「……りがと」

「へ、っ?」

「ありがと、ジャナフ」

「!!ッーー……」

……
…………呼吸が、止まる。
心臓も、止まるかと、思った。

目を、逸らせない。

心を、奪われる。
心を撃ち抜かれる。
って、きっとこの事を言うんだと実感した。

よっぽど嬉しかったのか、少し照れたように微笑む君。
それは、ボクが今まで女の子に感じた"可愛い"を遥かに追い越していったんだ。

でも、それだけじゃ終わらない。

「見てて。俺、頑張るから。
お前が信じてくれた気持ち、絶対に裏切らねぇ」

そう言った次の瞬間に見せるのは、ゾクゾクする位の自信に溢れた、貫かれるような強い眼差し。

そんな君を見たら、恋するとか、惚れるとか、そんな言葉じゃ足りなくて……。

「最高の仕事するから。最後まで見てて」

()せられるーー。

そう、魅了されてしまうんだ。
抱き締めたいとか、キスしたいとかじゃなくて……。見ていたいと、強く思うんだ。


そしてツバサはこの後。
"最高の仕事をする"って言葉を実現させて、更にボクを魅了していく。

……
…………。