「上手くいかせます。絶対にコハルさんを危険な目には遭わせません。
……だから、このまま俺に任せて下さい」

ツバサは一人で戦っていた。
真っ直ぐにナツキさんを見つめているけれど、ボクは知ってる。あの瞳の奥に隠された、答えてあげられなかったボクに見せた、あの瞬間の表情を……。

胸が、痛い。

このままで、本当にいいの?
自分を信じて、大切な作戦を話してくれた友達の想いを……踏み(にじ)ってもいいの?

ーーいや、違う。
変わらなきゃいけないんだ。
何よりも、自分自身の為にーー……!!


「ナツキさん、皆さん。お願いしますっ」

「っ……無理だ!そんな急に……」
「ーーツバサなら大丈夫ですっ!」

握り締める手に、一瞬で汗が滲んだ。
ボクは頭を下げるツバサとナツキさんの間に入って、自分の気持ちを言った。
脚が、身体が、心が震えて、声にも表れてしまいそうだ。

でも、ボクを信じてくれた(ツバサ)の為に、ボクも自分を信じる。
大丈夫だ、と言い聞かせて。
自分の気持ちは必ず伝わると信じて、口を開いた。

「ツバサは誰よりも、人の事を考える人なんです!
そんなツバサがコハルさんを危ない目に遭わせるなんて、絶対にないっ」

ツバサは言っていたんだ。

『札束を積み上げる事に喜びを覚える夢の配達人には、絶対になるな。
その向こう側にある、本当の幸福に気付ける配達人になれ』

それが、ツバサのお父さんが彼が夢の配達人になるって言い出した時にたった一つくれたアドバイスだって。

例えツバサが目指す先にレノアーノ様(大切な人)が居ても、彼は私欲の利益だけで動いたりしない。

「ツバサに任せれば、必ず上手くいきます。
ボク達は今まで通り、いつも通りしていれば、全部上手くいくんです。
っ……信じて下さい、お願いしますっ!」

頭を下げて、目をギュッと閉じて返事を待つ。
相手の返事をドキドキしながら待つ事なんて……。否定以外の言葉を期待して待つなんて、久々だった。

もう一度ボクに誰かを信じる勇気と自信をくれたツバサの力になりたいーー……。

その想いでいっぱいだった。
ドキドキし過ぎて、実際よりもずっと長く感じた返答の待ち時間。