私は知っていた。
ミライさんが大好きな人を見つめる時の瞳を、ずっと以前(まえ)から見て来たの。

そして、その想いが叶わないと諦めながらも……。悲しみながらも、その人との接点が出来る事に幸せを感じてる。
それを隠している事を嘘吐きと言うなら、間違ってると私は思う。

「ミライさんは、嘘吐きなんかじゃないわ」

そう言って笑顔を返すと、ノゾミちゃんは一瞬驚いた表情をして……。すぐに微笑った。

「気付いてるんですのね、兄の想う相手が誰なのか。それなのに、大切に想って下さってるんですのね」

「気付かない訳ないよ。
相手は私自身も認めちゃう、可愛くて良い子なんだから……!」

私は、医務室にある自分の机に目をやった。
その上に飾られているのは、家族5人で撮った写真。大切で愛おしい、私の家族。

「……やっぱり、ヒナタさんは今のままで充分ですわ」

「そうかな?」

「私がヒナタさんの立場でしたら、きっと恋敵をボコボコにしちゃいますもの」

「あははっ。ノゾミちゃんが言うと嘘に聞こえないよ」

ノゾミちゃんと話して、笑い合って、改めて思った。

大好き人も、大切な人も、笑顔でいて欲しい。
笑顔にしてあげる、なんてえらそうな事は言えないけど……。笑顔になるまで、ずっと側に居てあげられる人に、私はなりたい。
それが何も持っていない私が出来る、たった一つの事だった。