「素直なのは良いことですわ」

「え?」

「私はヒナタさんの素直な所、大好きですから」

「ノゾミちゃん……」

「兄の事、お好きなのでしょう?」

「っえ?!……っ〜〜!!」

罪悪感でいっぱいだった筈の心が、まさかの質問で全て恥ずかしさに変わっていく。顔を上げたと思ったら真っ赤に染まっていく私の様を見て、彼女はまさに小悪魔のようにニッコリ微笑った。

「ふふっ、やっぱり」

「ノ、ノゾミちゃん……!」

「大丈〜夫!兄には言いませんわ。
て、言うか、言いたくありませんもの」

「え?」

「ヒナタさんみたいな可愛い女性が想いを寄せているなんて羨ましい事、(あの人)には絶対に教えたくありません」

前から薄々思ってたけど、ノゾミちゃんってミライさんの事あんまり好きじゃないのかしらーー?

ノゾミちゃんの発言に、私はそう感じずにいられなかった。苦笑いしながら「そ、そっか」と答えると、手当てに使った道具を持って棚に戻しに行った彼女が、背を向けたまま口を開く。

「……私は絶対に夢の配達人とは本気の恋愛も、結婚もしません。
彼らは自分勝手で、仕事が1番で、嘘吐きで……。苦労するのが目に見えてますもの」

「?……ノゾミちゃん?」

「だからヒナタさんにも出来ればそんな苦労はして欲しくないのですけど……。
今更無理そう、ですわね。すでに始まってしまっているものは、止められませんわ」

振り向いて私の顔を見たノゾミちゃんは、いつものほんわか笑顔ではない落ち着いた表情で微笑った。
それは、夢の配達人を誰よりも身近で見て来た彼女だから言える言葉で……。また、彼女がミライさんの妹で、ミライさんの事を知り尽くしているから言える言葉。

「難しいですわよ、兄は。
あの人は夢の配達人の中で誰よりも自分勝手で、仕事が1番で、嘘吐きです」

でも、私はそんなミライさんが好きーー。
それに……。

「ーー私は、そうは思わないよ。
上手く言えないけど、ミライさんは私から見たら誰よりも素直で、純粋な人に見えるの」

あの人が本当に自分勝手なら、もっと本能のままに生きている。
仕事が1番ならば、サリウス王子に雇われたりしなかった。
嘘吐きなら……。大切な人を見つめる瞳が、あんなに優しい筈はない。