「っ……危険だと、分かってます。でも……っ、でも!私ッ……」

「ーーコハル!我が儘を言うんじゃない!」

大事な二つの選択を迫られてなかなか答えられずにいると、間に入ってくれたのはコハルさんの兄であるナツキさん。
なかなか戻って来ないコハルさんを心配で迎えに来たのか、ステージに上がってくると彼女の肩にそっと手を触れて説得を始めた。

「お前の安全を考えて決まった事なんだ。今更変更は出来ない」

「っ、……兄さん。でも……!」

「今回の事は、お前だけの問題じゃないんだ。もし何かあればその責任を背負うのはツバサ。
舞台を中止にせず、お前が演じられる期間も作ってくれたんだ。……千秋楽は、諦めなさい」

「っ……。
……、……。分かり、ました」

コハルさんは呟くように答えて、悲しそうに俯いた。

「……良い子だ。
ツバサ、騒がせたな」

「いえ」

「明日からよろしく頼む。
……さ、コハル。家に帰るぞ」

ナツキさんが俯いたままのコハルさんの肩を優しく抱いて、二人はその場から去って行った。
黙ったまま暫く二人が去った先を見つめていると、気遣うようにジャナフが言う。

「可哀想だけど、仕方ないよね。
やっぱり危険だって分かってるのに舞台に立たせる訳にはいかないし……。ナツキさんが言ってくれたように、この任務は失敗したらツバサの夢が遠のいちゃう」

ジャナフの言う通りだ。
一年という期間の中で夢の配達人上位10人と対決しなければいけない以上、たった一度の失敗であろうと回避したい。再日程を組む事に時間を削られるのは勿論、失敗の報告は当然サリウス王子の耳にも入るだろう。
俺一人の問題ならばいいが、失敗すれば俺を推してくれたヴィンセント様や最高責任者(マスター)達の批判や評価に繋がる……。


どうすればいい?
依頼人の想いか、仕事の成功率かーー……。

俺は、どうすればいいーー?

……
…………。