失いたくないと、思ってしまったーー……。

ツバサとボクの間に流れる、沈黙の時間。
これ以上の気持ちを上手く言葉に出来なくなってしまったら、ずっとボクを見つめてくれていたツバサの視線が外れて、俯いた。
その様子に、心から何かを引き剥がされて、空っぽになってしまったような痛みを感じながらも、ボクは"仕方ない"と思った。
涙を拭って、足を一歩後ろに引いて、この場を……。いや、ツバサの前から去ろうと、身体の向きを変える。

ーー……けど。
優しい光は、もう一度、ボクを包み込んでくれた。

身体にトンッと、衝撃を感じた直後。背中に感じる暖かい温もり。
ゆっくりと顔だけ振り返ると、ツバサがボクの背中に抱きついていた。

「……っ、ツバ……サ?」

「っ……」

問い掛けるように、その名前を呼んでみる。
ツバサはすぐには何も言ってくれない。けど、言葉の代わりに、ボクを抱く手にギュッと優しく力を込めてくれた。

何処にも、行くなーー……。

まるで、そう言ってくれているみたいに。

ああーー……。
もう、痛くも、苦しくも、悲しくもないーー。

空っぽになったと思った心が、気付いたらまたいっぱいに満たされていて、瞳からジワジワと溢れ出て地面に落ちていた。
 
乾いた自分の大地()を潤して、ボクも生まれ変わろうーー。

「……俺も、あるんだ。
ジャナフに話したい事、たくさんある。聞いて、くれるか?」

そして、そこにまた君が種を植えてくれて、ボクの心を鮮やかに彩る。未来と言う名の花を、春風が吹くように優しく咲かせてくれた。

「ーーうん、もちろん!
ゆっくり聞かせて?これからも、ずっと、ずっと……ずーっと!友達なんだからっ!!」

顔を見合わせて、微笑って……。
この日、この瞬間。ボクとツバサは本当の友達になったんだ。

ボクは絶対に、何があっても忘れないーー。

輝く太陽の下。
雨上がりのキラキラした世界のように、ボクの心も澄み渡っていた。

……
…………。