「僕だって義兄上(あにうえ)とお話ししたいのに〜」

「!……あ、義兄上?!
ぜ、絶対にそんな風に呼んじゃダメですからねっ?」

「え〜何で?姉上と結婚するのなら、僕にとっては義兄上でしょう??」

「っ〜〜……だ、だから!それは……」

レオへの対応に困って言葉を詰まらせていると、私の耳に届く「はははっ」と言う笑い声。その声に目を向けると、私達のやり取りを見ていたらしい父ヴィンセントが優しい笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。

「何やら楽しそうだな。姉弟(きょうだい)仲良く何を話しているんだい?」

「!……お父様!」

「あ!父上〜!」

声を掛けられたレオはダッと駆け出すと嬉しそうに父に抱き着き、可愛い笑顔で見上げながら問われた件について無邪気に答える。

「父上、聞いて下さい。ツバサさんからのメールの返信にお困りだから僕が代わりにご挨拶しようとしたんですが、姉上がポケ電を貸してくれないのです」

「レ、レオ!」

「あと、ツバサさんの事を義兄上って呼んじゃダメだって。何でですか?姉上の旦那様になる方なら、僕にとっては義兄上でしょう??」

「っ〜〜〜……」

純粋で真っ直ぐすぎる弟の言葉に、私はもう何も言えない。
恥ずかしいやら、こんな状況を見られて気不味いやらで目を泳がせていると、そんな私に気付いてかお父様は場を和ませるように話し始める。

「ははっ、そうかそうか。レオはツバサ君と仲良くなりたいのだな?
しかしな、顔見知りでないレオから突然メッセージが来たらツバサ君はビックリしてしまうぞ?レオだって、初対面の人に突然名前を呼ばれたら驚くし困るだろう?
今度ツバサ君がこの邸に来る際は必ず会わせてあげるから、その時まで我慢しなさい。いいね?」

そう頭を撫でられながら優しく言い聞かせられたレオは、ようやく納得したらしく「はいっ、約束ですよ!」と笑顔で頷いた。
さすがはお父様。ホッと一安心して安堵の溜め息を吐くと、視線を再び私に向けたお父様が自分のポケ電を見せながら口を開く。