「っ……分かる。分かるよ、ツバサの気持ち」

ジャナフの言葉が、俺の心に直接語り掛けてくる。そして、それと同時に彼の心も、流れ込んでくるようだった。

「セトさんには、セトさんの言い分がある。気持ちがあるッ……。
でも、セトさんが自分の気持ちをぶつけるやり方は……間違ってると、ボクも思う!」

「っ……、放せ……ジャナフッ」

分かるなら、何故邪魔をする。
間違ってると思うなら、何故止めるーー!!

俺の心がそう叫び声を上げて、自分を縛り付けているジャナフの能力(ちから)を解き消そうとしていた。……けどーー。

「けど、ボクは嫌だッ!!殺して……ほしくないッ」

「っ、黙ッ……」

「ーーツバサに、人殺しになってほしくないよッ!!!」

ーーッ、…………。

その言葉を聴いた瞬間。
パァンッと、頬ではなく、歪んだ心が叩かれたみたいに感じて……ハッと、目が醒めた。

俺に、人殺しに、なってほしくないーー?

ジャナフの、その純粋で真っ直ぐな想いが、俺の心を覆い尽くしていたドス黒い闇を払う。

……。
……、…………。

…………っ。
……俺は、何を……してたんだ?

そう思ったら、俺をずっと見つめていたジャナフがホッとしたように微笑った。

「ツバ……サ?」

「……っ、ジャナフ?……俺、一体……っ」

「っ、良かったぁ……。元に戻ったんだね?」

元に、戻ったーー?

ジャナフの言葉に、一瞬どういう意味か分からなかった。
けど、ふと視線を移すと……。その先に映るのは、狼達に覆い被さられているセト。

「!!っーー……狼達(お前達)!やめろッ!!」

俺が咄嗟にそう叫ぶと、狼達はサッとセトの上から退いた。
俺は慌てて駆け寄り、セトを抱き起こす。手脚に複数の咬み傷があり、痛みからか気を失っていたが、幸い命に関わる程ではない。
それを見てホッとする。が、セトがこんな傷を負ってしまった事態を自分が引き起こした事が徐々に蘇ってきて……俺の心と身体は震えた。