ボクには分かる。
セトさんは、ツバサが大好きだったんだ。心から、友達になりたい、って思ってたんだ。
でも、色々あって、二人はすれ違っていて……。

そして、最終的に引き金になったのは"ボクの存在"。
ボクとツバサが仲良くしている様子や、一緒に任務に行っている姿を……。かつての自分と比較して、セトさんの悲しみや寂しさが怒りや憎しみに変わってしまっているんだ。

……そう、分かってしまって、辛い。
ボクには、他人の感情を敏感に読み取ってしまう不思議な能力(ちから)がある。
ただ、それはいつ発動するかも、何故そんな能力(ちから)が自分にあるのかも……分からない。

ボクは、どうしたらいいーー?

セトさんの本心を知ってしまったボクは、一体どうしたらいいのか分からなかった。
下手に何かを口にすれば、この能力(ちから)の事がバレてしまう恐れもあったから……。
この能力(ちから)の事は、今は亡き母との秘密。その事もあり、何も言えずにいるとセトさんが再びニヤリッと笑いながら言った。

「……だから、グチャグチャにしてやるんだよ。全部」

「!っ、え……?」

「アメフラシの巫女がいなくなれば、任務は達成出来ない。そうすれば、瞬空(シュンクウ)さんとの下剋上もなくなって……ツバサ(そいつ)は終わりだ」

その言葉に、ドクッと心臓が嫌な音を立てた。まさか、と思い、頭を過ぎった質問を口にする。

「っ、……もしかして、蓮葉(レンハ)様達を攫った賊達はセトさんがっ?」

「……ああ、そうだよ。奴等、思ったより上手くやってくれたみたいだな。
おまけに、アッシュトゥーナ家の令嬢まで巻き込めて……オレは本当についてるよ」

「ククッ」と笑って、セトさんが答えた。

何て事だろうーー……。

それは、すれ違って、(こじ)れた末に歪んだ友情が生んでしまった悲劇だった。