昔、セトが連れていた犬達よりも更に大きい。それに、何より目付きが違う。
鋭い眼差しで俺を貫き、尖った牙を見せ付けながら敵意を剥き出し、力と威圧の込もった低い姿勢の足取りで飛び掛かる瞬間を今か今かと、待ち構えている。

突然の出来事に、恐怖よりも困惑した。
すると、背後からセトの笑い声が聞こえる。

「会えて嬉しかったよ、か……。
オレもお前に会えて嬉しいよ。この日をずっと待ってたんだからな」

一歩でも動けばそれを合図に飛び掛かってきそうな狼達を警戒しながらも、俺はゆっくりと顔だけ振り向いてセトを見た。

一瞬で、悟ったーー。

そこに居たのは、かつて友人になれそうだった人物ではなくて……。笑っているけど笑っていない、鋭い目付きで俺を見つめる、狼以上に敵意を剥き出しにしたセトだった。

《ホ〜ラ。
ニンゲンナンテ、シンヨウスルナーー……》

その時。
心の中で、そんな囁きが聞こえた。