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「あら、ツバサ君!
ふふっ、眼帯なしの姿とても新鮮ですわね。素敵ですわ」

「ありがとう、ノゾミさん。
最高責任者(マスター)が呼んでる、ってホノカさんに言われて来たんですけど……」

ここは最高責任者(マスター)の部屋に直接繋がる扉が唯一ある部屋ー秘書部屋ー。
さっきの内線を掛けてきたのはどうやら最高責任者(マスター)だったらしく、ホノカさんからこの後すぐに向かうように言われたのだ。

呼ばれた理由は、大体予想がついてる。
ついに来たんだ、この時がーー……。

「存じております。
ツバサ君が来たらすぐに通すように言われておりますので、このまま奥へどうぞ」

「はいっ」

高鳴る鼓動がそのまま口から出たように少し震えた力の込もった声。
でも大丈夫。怖い訳でも緊張している訳でもない。俺は今最高にワクワクしてる。
つまり武者震いってやつだ。

「ツバサです。失礼します」

奥の扉に足を進め、コンコンッとノックするとすぐに「入りなさい」と言う声が聞こえた。
扉を開けると、真っ先に瞳に映るのは正面の机に着いている最高責任者(マスター)の笑顔。それを見たら、"やはり"と俺の顔にも自然と笑顔が灯る。

「決まりましたよ、最初の下剋上の相手と日程が」

待ちに待ったこの瞬間。
思わず拳を握り締め、小さくガッツポーズをせずにはいられなかった。

「今からその詳細について説明します。
……心の準備は良いですか?ツバサ」

「はいっ、よろしくお願いします!」

迷いも躊躇(ためら)いもない。
ただただ真っ直ぐ、俺は走り始めていた。