アメフラシ、と言う能力を持った彼女が、世間からどう思われているのかーー……。
「……、……。
ーー……っ?……え?もしかして、ツバサ?」
!……っ、……えっ?
ドキンッと、弾む鼓動。
突然美しい音が鳴ったからだ。
名前を呼ばれて、ずっと蓮葉様を気遣って見つめていた俺がハッとすると、いつの間にかもう村に足を踏み入れていた。
そして、音に導かれるように視線を向けると、先程馬車の中から見た人集りの中心に居たのは……。
「っ、レノ……ア」
赤茶色の髪をポニーテールにして、ドレスではなく動きやすそうなズボンとパーカー姿の、レノア。
まさかの再会に驚いて立ち止まり彼女を見つめていると、レノアは自分を取り囲んでいた人達に「少し失礼します」と言って、嬉しそうな表情を浮かべながら俺に駆け寄ってきた。
「っ……すごい、偶然!
私、今日からこの村で子供達に勉強教えたり、田畑を広げる手伝いをする為に来たのよ」
その言葉にピンッとくる。
そうか、ボランティア活動。
何故彼女がこんな場所に居るのか、と言う心に浮かんでいた疑問はあっという間に晴れた。
しかし、予想外過ぎたこの出来事に俺の心は思ったより困惑しており言葉が出てこない。
するとそこに、俺達を追って馬車から降りて来たジャナフが加わった。
「ツバサ〜立ち止まってどうしたの?
……、……ーーって!ま、まさか……レノアーノ様ぁあっ?!」
人を指差しちゃいけませんーー。
何て、ツッコむ余裕など当然今の俺にはない。
だが、そんな俺をまたハッとさせるのは美しい音。レノアはジャナフの反応に「くすくすっ」と微笑むと、屈託なく自ら握手を求めるように手を差し出して自己紹介する。
「初めまして。ご存知頂いておりますように、レノアーノ、と申します。どうぞよろしくお願いします」
「!……あ、あっ……ジャナフと申します!
夢の配達人の見習いで、っ……ツ、ツバサ君にはいつもお世話になっております!」
恐る恐る手を取った後にペコリッと深々と頭を下げるジャナフを見てレノアはまた楽しそうに笑い、そして、俺の隣にいる蓮葉様に視線を移した。