「甘い考え、じゃが……。わしは嫌いではない」

「え?」

「そんな風に、お主のように想える人間が増えれば良いと思う。
そしたらきっと、優しい世界になるのにのう?」

「!……ーーっ」

そう言って微笑んだ彼女はものすごく綺麗で、俺はレノア以外の女性に初めてドキッとした。
眼帯で漆黒の瞳を封じていても、分かる。この人の心の音は、とても美しいという事が……。

国を想い、民を想う、優しい心。
まだ15歳の彼女は、きっとこれからますます美しく輝いていくのだろう。
この方に瞬空(シュンクウ)さんが命を懸けて仕えている意味を、俺は身を持って知った。

そして、心から思えた。
任務だから、ではなく。この方の事を護ろう、と……。

「!……ツバサ?」

「まだ、誓いの言葉を告げておりませんでした。遅れてしまい、申し訳ございません」

俺は跪いて頭を下げると、誓いと決意の言葉を蓮葉(レンハ)様に告げる。

「私、夢の配達人ツバサ。
蓮葉(レンハ)様のアメフラシの儀式、恙無(つつがな)く進むよう全力で支え、この身を捧げてお護りする事を誓います」

そう言って顔を上げると、目の合った蓮葉(レンハ)様は目を見開いていた。が、すぐに照れたような、嬉しそうな笑顔で俺に言う。

「うむ!頼りにしておるぞ、ツバサ!」

……
…………そして翌日。
俺とジャナフは蓮葉(レンハ)様と数人のお付きの者と一緒に蓮華国を出て、アメフラシの儀式が依頼された場所へ向かう事になった。