目が合った瞬間、ホッとしたーー。

最高責任者(マスター)に「ジャナフを同行させる」って言われた時は正直戸惑った。一緒に居る時間が長ければ、彼に目の事や能力(ちから)の事がバレてしまうかも知れないから……。

でも、今はジャナフが一緒に居る事に救われている自分がいる事に気付いた。
蓮華国の衣装に着替えた時の無邪気な笑顔。そして今も、彼が笑顔で食事を頬張る元気な姿を見たら、何だか安心した。

思わず、ずっと張り詰めていた気持ちが緩む。同時に「フッ」と知らず知らずのうちに口元も緩むと、それにすかさず気付いた蓮葉(レンハ)様が言った。

「あの者は友人か?」

「はい。大事な、友達です」

本人を目の前にするとなかなか言えない気持ち。俺が答えると、蓮葉(レンハ)様も「フッ」と微笑った。

「そなたは変わっておるの。
あの者の事も送られてきた資料で読ませてもろうたが、ドルゴアの国の者なのじゃろう?
小麦色の肌、昔は珍しくなかったが近年は……。白人の者が王の座に着くようになってからは、広いドルゴアの中でやや貧困の地方に住む者の特徴じゃ。身分の低い彼らは王族の(めい)に絶対、使い捨ての駒のように扱われる事もある。それを知った上で、友人と申すか?」

「……。何が、言いたいのですか?」

「あの者がサリウス王子の手の者、つまり間者(かんじゃ)だとは思わんのか?」

「……」

蓮葉(レンハ)様の言葉は、100%否定できない可能性だった。
何故なら俺がジャナフと知り合ったのは、サリウス王子がレノアの誕生日パーティーに出席し、求婚する為に来日していた時期とピッタリ重なる。
彼と出会った時、まだ俺とサリウス王子の間には何もなかったから最初からピンポイントで狙われていたとは考え難いが……。

『ボクね、夢の配達人になる為に港街(ここ)に来たんだ!』

ミライさんがサリウス王子に雇われていた時期とも、ピッタリ被ってる。
ここまで偶然が重なる事が、果たしてあるだろうか?