そして、その夜は神殿の前に用意された大きな焚き火をみんなで囲んで盛大な食事会が開かれた。
至る所に置かれた松明(たいまつ)の火が灯る中で、蓮華国の人達がボク達……。と、言うかツバサを歓迎して楽しませる為に様々な芸や特技を披露してくれる。

これがこの国の、お祭り、ってやつなのかな?

賑やかで楽しい雰囲気だけど、ボクはこういう場に慣れていなくて……。何だか落ち着かなかった。
ツバサはすっかり蓮葉(レンハ)様に気に入られてしまって片時も傍から離してもらえないし、全然ゆっくり話す事も出来ない。

『ジャナフ、いいですね。ツバサを絶対に一人にしないで下さい。……頼みましたよ?』

最高責任者(マスター)にそう言われて付いて来たけど、ボクが一緒に来る意味は本当にあったのかな?
確かに時折元気がないけど、任務、ってなればツバサはしっかり気持ちを切り替えてるし、さっきだって……。

ーーー俺が一生傍に居てほしい女性は、レノアーノだけなんですーーー

ボクが助けたり心配しなくても、彼は真っ直ぐに自分の気持ちを口にして、あの場を乗り越えた。
そして蓮葉(レンハ)様やこの国の人達の心を掴んで、すっかり解け込んでる。

……遠いなーー。

そんな風に思いながら蓮葉(レンハ)様と上座に居るツバサに視線を送ると、その視線に気付いた彼とバチッと目が合い慌てて微笑った。

とりあえず、ツバサの負担にならないようにだけはしないと……。

あんまり食欲が湧かなかったけど目の前の料理を頬張って、近くに居る人達と話をして、いつも通り元気に見せてボクは過ごした。