……
…………。

ーー……っ。

何か生暖かい物が、俺の頬に触れる。
ペロペロと、俺を舐める……舌?

《……あ!おきた》
《おきたよ、おきた!》

耳に届く動物達の声。
ゆっくりと目を開けると、地面に横たわっていた俺を動物達が取り囲んでいるのが見えた。

《ツバサ、だいじょうぶ?》
《きゅうにたおれちゃったから、しんぱいしちゃった〜》

急に、倒れた……?
そう言えば、心が暖かくなった気がして、それから……、…………。

「!っ、そうだ!……(あいつ)はっ?!」

怪我をした狸の事を思い出した俺は、ガバッと上半身を起こした。すると……。

《ここにいるよ〜》

「っ……!?」

そんな声が聞こえたと思うと、傍らに居たらしい狸は俺の膝にぴょんっと乗ってその元気な姿を見せてくれる。

《もういたくないよ〜。なおったの〜》

「っーー……嘘、だろ?」

そう言いながら膝の上でぴょんぴょん跳ねる姿。
信じられない。本当に傷が治って、元気に、生きている。

嬉しいのに、信じられない。
目の前で起きたまさかの事態に困惑していると、周りに居る動物達が言った。

《ツバサがなおしたんだよ〜》
《ツバサすご〜い!まほーつかい、ってやつ〜?》

「!っ……俺が、治し……た?」

《うん!こうね、てをたぬきさんのあしにおいて、パァ〜ッて!》
《すごくキレイなひかりだった〜》
《でも、そのあとツバサがバタッてなっちゃったの〜》

……。
動物達の言葉には、嘘偽りが全くなかった。
けど、俺が思い出せるのはーー……。

『ならば、私に身を(ゆだ)ねろ。信じて、任せろ』

その不思議な言葉を聞いたのが、最後だ。

《ツバサ!ありがとうっ!》

狸が嬉しそうにお礼を言いながら、俺の胸に飛び込んで来る。
震える手でそっと抱くと、とても暖かい温もりを……。生命を感じる。
それなのに、俺の震えはなかなか止まらなかった。

《?……ツバサ、さむいの?
なら、こんどはボクがあたためてあげるね!》

「……っ!」

優しい、暖かい温もりを抱きながら、俺は暫く……。その場から動く事が出来なかった。

……
…………。