え?弟からの電話って……何でだ?!
え?っ……なに?何かのテストかっ???

レノアに弟がいる事は知っていた。ミネア様がヴィンセント様と結婚して、その間に生まれたアッシュトゥーナ家の跡取り息子レオ君。
けれどまさか、レオ君が俺と話したいと思ってくれているなんて全く思ってもいなかった俺は、ただただ戸惑っていた。すると……。

『!……こら!
レオ、また私のポケ電を勝手に触って〜!』

『!っあ、やばっ……!!』

『返しなさい!』

『やだっ!いいでしょ〜、もう少し〜!』

ーー……っ。

電話の向こうから聞こえて来た声に、胸がドキンッと弾んだ。
久々に聴く、レノアの声。それは相変わらず心地良い響きで、怒り口調なのに、俺の心を優しく包んだ。

でも一方で、まさか俺と電話が繋がっているだなんて知らないレノアは、この後もレオ君との仲の良い姉弟のやり取りを晒し続けてくれる。

『こら〜!返しなさい!』

『もう少しだけ〜!』

『言う事聞かないとおやつなしだからね!』

『いいも〜ん!僕、おやついらな〜い!
おやつ食べ過ぎると、姉上みたいに太っちゃうから』

『!!っ〜〜……レオ!』

『ツバサさんに言っちゃうよ〜?姉上の今の体重は〜……』

……。
これは、聞かなかったフリをした方が、いいよな。

そう思ったけど、もう限界だった。
バタバタしながら姉弟喧嘩をするレノアに、愛おしさが込み上げた俺は吹き出した後に「あははっ」て、声を上げて笑ってしまった。

そしたら、それはちょうどレノアがレオ君からポケ電を奪い返したタイミングだったみたいで……。

『……ーーっ?!
う、嘘でしょっ……?ツ、ツバサッ?!』

通話中に気付いたレノアは慌てて、またレオ君に怒って、俺に恥ずかしそうに謝った。

そして、「あ〜!姉上の意地悪〜!」って言葉の後にレオ君の声は聞こえなくなったから、おそらく部屋から追い出されてしまったのだろう。
静かになった部屋の中、レノア申し訳なさそうにもう一度俺に謝る。