片翼を君にあげる②


そして、人を傷付けず、人に恐れられない能力(ちから)の使い方。
それを学び習得する事が出来れば、何の問題もない筈だ。

まずは勝手に流れ込んでくる他人の心の声。
それを制御する事が出来れば、いつでも眼帯やアイレンズに頼らなくても暮らせるようになる。
霊や生き物と心を通わせられる事も、上手く付き合う事が出来れば問題ないだろう。

今のところ、自分が自覚している能力(ちから)は自分さえ気を付けていれば、さほど他人に害があるものではない。
問題はそれ以外。
今まで眼帯やアイレンズで封印してきた結果、俺には他にも能力(ちから)があるのか……。正直、未知数なのだ。

もしも自分がシャルマと同じ、spellbind(スペルバインド)を持っていたらーー……?

知るのが、怖い。
何故なら自分は、"容姿に漆黒を持つ希血"だから……。
言い伝え通りならば、自分は間違いなくシャルマ以上の能力(ちから)を持っているという事になる。

「人を操る以上の能力(ちから)って……。
っ、なんだよ……それ、もう化け物(バケモノ)じゃん」

別荘内を歩いていた足が、ピタリと止まってしまう。
数日前からここに来たのに、いつもこの繰り返しだった。
まるでその先に"自分の能力(ちから)の秘密"が隠されているかのように、別荘内の一定の場所から奥へ……。俺は、踏み込めなかった。

……
…………。

引き返して別荘の外に出ると、頭の中のザワザワは消えた。でも、シャルマの怨念がズンッとのし掛かったように心が重くて気持ちが晴れない。

このまま、何も進めずに終わるのかーー?

残る下剋上は8つ。
本当は一日も早く復帰して、下剋上を再開しなければならないのに……。けれど、今の自分がこのまま戻ったところで、立ち塞がる分厚い壁に簡単に阻まれてしまうのが目に見えている。

俺は、一体どうすればーー……。

先の見えない暗闇に迷い込んで俯きかけた。
その時……。

ピコーン、ピコーン!ピコーン、ピコーン!

「!っ、え……?」

突然、ズボンのポケットに入れていたポケ電が鳴った。
ここは山の中だから電波が入ったり入らなかったりで、ここ数日は目覚まし時計代わりにしか使っていなかったポケ電。でも、この音は目覚ましのアラームではなく電話がかかって来た際の着信音だ。
取り出して画面を見ると……。