「肉!今日はお肉料理にしよ〜!」

「お、いいね!
時間あるし、ローストビーフでも作っちゃう?」

「賛成〜!あ、でもお肉冷蔵庫にないかも〜。
よし!弟よ、今から買い出しに行くぞ〜!とうっ!」

「!っ……わわっ!姉さんっ、危なッ」

ソファーからぴょんっと飛び降りて僕の背中にしがみ付く姉を、僕は慌てておんぶした。
その瞬間、彼女に最後に言われた言葉が思い浮かぶ。

『ライ君が私と付き合ってくれたのって、私がお姉さんに少し似てたからだよね?』

……そう言われてみれば、そうだ。
ボーイッシュな見た目に、サバサバした性格。僕をグイグイ引っ張って行く所や、普段は何も考えていないように明るいのに、しっかりとその場、その状況に合わせて一緒に居てくれる。……、…………。

「あと、今夜は久々に飲も〜!……と、思ったけど。また明日から実習があるから、それはダメか!」

背中で「あははっ」て、笑う姉。
その笑い声が背中から体温と共に伝わってきて、何だか少しくすぐったいと感じると同時に、僕は思った。

僕が今1番大切にしたいのは、この人だーー。

背中から姉がずり落ちないように添えた手に、ついつい力が込もる。
今この状況でもしも何らかの窮地に追い込まれても、自分はこの手を決して放す事はないだろう……。

「ーー……ううん。飲もう」

「ライ?」

「今夜は飲んじゃおうよ!」

いつも通り、弟の顔をして、僕は微笑った。

生まれる前から一緒に居て、今も僕の前では飾らずに居てくれる事が何よりも嬉しいから……。君がこれ以上無理をしないように、ずっと弟でいるよ。

「うんっ!
じゃあ、お肉屋さん行って〜酒屋さん行って〜」

「デザートにケーキ買っちゃう?」

「お、ライ君さっすが〜!
入隊祝いにホールケーキにしよ〜!」

「姉さん、それじゃまた太……っ、いた!」

「うるさーい!」

「ちょ、っ……ちょ、ちょ!危ないってーー……」

この時間を、壊したくないーー。

どんな形でも、一緒に居られて、笑顔で居てくれたらそれだけで幸せだった。
こんな毎日が続けばいいって、本当に、本当に思ってたよ。