「もう私…もう死にたい…」
「……」
花音が俺を抱きしめてきた
とても震えながら…
泣きながら…
「蒼太…」
「どうしたの?」
「私は…また明日も生きてないといけないの?」
「こんなに苦しいのに…」
「ううん、なら俺と死のう、俺は花音がいないと生きていけないから…」
「え…いいの?」
「1人でなんて生きていけないから…一緒に死のう…」
「うん」
「蒼太…ごめんね?今日あんな話したのに…約束守れなくて」
「うん…大丈夫」


《この日の朝》
「これからも一緒にいようね…!」
「うん!これからも、来世でも…一生俺は花音といたい」
「私も蒼太とじゃないと生きていけないなぁ」
「ならよかった」
「え?」
「あ…何も無い!」
「分かった!早くデート行こうよ!ずーっと楽しみにしてたんだよ!?」
「分かった分かった」
この時の花音はとっても楽しそうだった…だからまさか花音が死にたいと思ってるなんて…気づかなかったんだ

《現在》

「私もほんとは蒼太と幸せに毎日生きたかった…だけどもう限界で死んじゃいたくて…」
「いいよ?俺は花音と一緒に死ぬ…」
「ほんとに…いいの?」
「うん、さっきも言ったけど俺は花音がいないと生きていけないから」
「うん…」
「じゃあ最後に出掛けよっか」
「うん…」
「どこに行こう…」
「私たちが出会った場所に行きたい…」
「あの古墳?」
「そう!」
「手つなご?」
「うん!」
花音と手を繋げるのもこの人生で最後…
「最後なんだし、一緒に遊ぼうよ」
「ううん、最後じゃないよ…?俺たちは…来世でも、一生一緒にいるって言ったでしょ?やだ?」
一緒に遊べるのも…この人生で最後…
「ヤダじゃない!」
「うん!遊ぼう」
「あ、沢山遊んだし湖行きたいな」
「行こう」
「あ、着いたよ、俺たちここで出会って、それからずーっと一緒にいて死ぬ時も一緒で…ほんとに幸せ」
「そうだね」
俺は花音と手を繋いだまま、湖に映るキレイな景色を見ていた。視線を隣に移すと花音がこっちを見ていて
このキレイな景色を見てられるのも…この人生で最後…もうたくさんこの人生で最後のことがたくさんある…

そう思うと自然に涙がこぼれた

「蒼太?怖い?」
もう全部吹っ切れているような表情で聞かれた
その顔は…すっごく美しかった…だからそのまま
「ううん、花音がとっても美しかったから」
そういうと花音はツゥ〜っとキレイな景色が映っている目から涙がこぼれた
「ありがとう…あ、出会ってから私ばっかりお願い聞いてもらってたから蒼太のお願いも聞くよ?」
「いいよ、俺はずーっと花音としあわせになることが俺のお願いだから」
そういうと俺は花音の涙を丁寧に手で拭いた

「蒼太…ギューってして?」
「うん」
そういうと2人は出会った湖に抱き合いながら

落ちた…

花音が見える…目をつぶっていてもうこの世界からいなくなる準備は出来ているみたいに思えた
俺はずっと花音を眺めていたら…


花音はこっちを見て笑った


その瞬間今までの思い出がフラッシュバックして出てきた



もうここまで来たのにずるいかな…?



俺の本当のお願い…聞いてくれますか?






はぁ!っと私は目を覚ました
ここは…病院?
私の知っている人影が近づいてくる
「花音?大丈夫!?花音蒼太くんと出会った湖で溺れてたの」
「え!?陽葵!?蒼太は??」


そこには私の親友で医者の陽葵がいた



「花音…落ち着いて聞いてね?絶対だよ?」
「え…?うん」
「花音はね?一昨日に瀕死の状態…つまり死にかけの状態で見つかったの…だから今生きてる…」
私は??ってことは蒼太は…
「だけどね…?一昨日見つかったのは…花音だけだったの…どんなに探しても蒼太くんはいなかった…」
え!?私たちずっとくっついて湖に落ちたはずなのに…?なんで私だけ見つかって蒼太は見つからなかったの?
私は蒼太も言ってくれてたけど蒼太なしでは生きていけないのに…そんなの嫌だよ…


「でもどんなに探してもいなかったから…もう多分…」


私…最悪だ…
私が蒼太を殺したようなことじゃん…
あの日に私が死にたいなんて言わなかったら私の大好きな蒼太は生きていたのに…









俺の本当のお願い…聞いてくれますか?









俺はやっぱり…花音には生きていてほしいな







だって…生きている花音はこんなにも美しいって気づいたから







多分2人が生きたらまた俺と死にたいって言ってくる…

でも俺が死んだらきっと花音は生きてくれる


俺が死んでも花音があのキレイな空に来るまで待ってるから…いつまでも…だから…長生きして戻ってきてほしい


俺が死ぬのは怖くないけど…
花音が死ぬのは俺が死ぬよりもっと苦しいし怖い…

でもたまには俺のこと思い出してほしいな


俺はこの事を何も知らない他人が「生きて欲しい」と聞いたらいい人と思われると思う…

だけどこの事を知っている人が「生きて欲しい」と聞いたら…それは花音を「生き残す」ということになる…

だけど…それくらいに俺は花音が好き、大好きだから…









死にたい花音と…
生きて欲しい俺…
どちらのお願いが叶いますか??