私の居場所はこの腕の中【優秀作品】

◇ ◇ ◇

「みくちゃん! 今夜、暇!?」

浅野さんが突然私に尋ねる。

これ、まさか……

「予定はありませんけど……」

とっさに嘘をつけるほど器用でない私は、馬鹿正直に答えてから後悔した。

「みくちゃん、おごるから合コン来て!」

合コンなんて行ったことない。

だって、合コンって、知らない人と話をしなきゃいけないってことでしょ!?

困った私は、桜庭さんに視線を向けた。

私と目が合った桜庭さんは、困ったように笑う。

「浅野さん、佐々木は、多分、そういう所苦手だと思うので……」

そう伝えてくれる。でも……

「大丈夫! 俺がちゃんとフォローするし。男はみんなうちの社員だから、そんなに気を遣わなくていいから」

浅野さんは、全く聞く耳を持たない。

「ね、みくちゃん、行こ?」

普段、とてもよくしてもらってるだけに、無下に断りづらい。

「でも、皆さん、お友達なんですよね? 私だけ誰も知らないのは……」

全くしゃべれる気がしない。

「俺がいるじゃん。みくちゃんはずっと俺の隣でいいから。ね?」

どうしよう……

私が返答に困っていると、桜庭さんが答える。

「浅野さん、すみません。やっぱり佐々木だけを行かせるのは……」

せめて、桜庭さんがついて来てくれるなら、心強いのに。

「いつもなら、じゃあ桜庭さんもって言うんだけど、今回は人数合わせだからなぁ。大丈夫! 俺がちゃんと責任持ってみくちゃんを守るから」

守るって、そんな大袈裟な……

「佐々木さん、どうしたい? これは仕事じゃないから、嫌なら断っていいんだよ」

桜庭さんが心配そうに私に尋ねる。

普段の私が頼りないから、こんなに桜庭さんに心配させちゃうんだ。

私がもう少ししっかりしなきゃ!

「大丈夫です。浅野さんもこうおっしゃってくださってますし、失礼のないよう行ってきます」

うん、もう入社して3年目なんだし、そろそろ桜庭さんに心配かけないように自立しないと!