俺がお前を夢の舞台へ


✴✴

「勇翔、今から時間ある?」


ミーティングが終わり、解散となってすぐ勇翔に声をかける。


「自主練しようと思ってるだけだけど、何か用?」


背番号を丁寧に折りたたみカバンにしまいながら言う。


「蒼空のお見舞い…行かない?」


背番号1を蒼空に見せたい。


勇翔がもつ背番号1を。


「…行っても話すことねーし」


“行かない”とは言わなかった。


少し前なら問答無用で断っていただろうに。


「エースナンバー背負ってマウンドに立つって宣言するだけしたら?蒼空も喜ぶと思うよ」



予選まであと1週間。


蒼空だって勇翔のことを気にかけているだろう。


「……5分だけな」


“行く”とは言わないのが勇翔らしい。


「素直じゃないなぁもう」


「うるせ。さっさと行って帰るぞ」


照れているのか、スタスタと校門に向かっていってしまった。