俺がお前を夢の舞台へ


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「あ、菜々子ちゃん!さっき何か言いかけてなかった?」


なんだかんだ忙しく動き回り、あっという間に練習時間は終わった。


ミーティングが終わり、部員がパラパラと解散していく。


「あぁ!そうでした。結城さんって、蒼空さんに並ぶくらい上手いんですよね?」


「そうだけど…」


チラッと蒼空を見ると、顧問の大柳(おおやぎ)先生と談笑していた。


「なら、結城さんを野球部に勧誘してくれませんか?」


濁り一つない真っ直ぐな瞳。


「……へっ?」


勧誘?


勇翔を?


「次こそ、甲子園に行きたいんです。次がラストチャンス。先輩たちは負けたら引退なんです」


話しかけても無視される光景が目に浮かぶ。


ウザいと言いたげな瞳も、話しかけるなオーラも、簡単に想像できる。


「…無理だよ」


あの勇翔に勧誘なんてできない。