“俺は1度野球を捨てた”


勇翔は、入部初日の挨拶で開口一番に言った。


“だけど。蒼空を甲子園に連れていくために戻ってきた”


と。


力強い言い切る勇翔の言葉で、グラついていた部の雰囲気は一変した。


勇翔は、自分の想いを赤裸々に語った。


蒼空との不仲、価値観の違い、嫉妬。


それらの変化と、新たな決意。


そして、蒼空への感謝。


それを聞いた部員たちの目に浮かんだ涙が忘れられない。


勇翔の潤んだ瞳も─…。


“アイツのために頑張るから。アイツのために投げる。アイツのために打つ。だから、力を貸してくれ。アイツを甲子園に連れて行きてぇんだ”


勇翔が部員に頭を下げた。


初めて見る姿だった。


“ったりめーだろ!よろしくな、勇翔!”


赤く充血した目をこすりながら、タローが勇翔の背中を叩いた。


歓迎の拍手が鳴り止まなかった。


バラバラだったチームが1つになった瞬間だった。