俺がお前を夢の舞台へ

「まだ4歳の弟を連れて俺は親戚の家に住ませてもらうことになった。頼れる親戚がその夫婦しかいなかったから」


それが突然の引っ越しの理由……。


「その夫婦の家計は苦しくて、とても野球を続けられる状況じゃなかった。まだ4歳の弟は何かと手も金もかかって、俺がワガママ言えるはずもなかった。だから野球を辞めた」


勇翔は無表情だった。


でも、かすかに目が濡れている気がした。


「…野球…続けたかった。もっと練習して上手くなって、甲子園に行くのが夢だった。蒼空と彩絢とした約束を破るのも嫌だったし、諦めたくなかった。

けど、無理なもんは無理なんだよ。金がなかったら道具が買えないし、練習に参加できない。

だったらいっそのこと…野球なんか忘れてやる。二度と野球と関わるもんか。そう心に決めた」


……っ!


カタカタカタカタ…とテーブルが揺れる。


「勇翔…」


思わず、震える勇翔の手を握りしめていた。