サボってしまった。



授業じゃなくて、超スペシャルイベント。

そう、卒業式。


卒業証書だけかすめて、オキニのバイクにまたがって。


イキった俺は、



「……来ちまった」



あのネイルサロンの前まで来てしまっていた。



何してんだろ。

無意識。無自覚。
あー怖い、自分が怖い。


今日はたまり場で仲間が卒業祝いのパーリーしてくれるってはしゃいでたのに。


今世紀最大の後悔。

こんな寄り道するんじゃなかった。



「はぁーー……帰ろ」



傷がえぐられるだけだ。


じゃあな。

今度は俺が言うよ。



踵を返すと、不意にどこからか視線を感じた。


目をやれば、その先に。

記憶に鮮明に焼き付いた面影が、現実に化けて出た。


マジもんの幽霊かと思った。


けど、ちがう。



ちがう……!!




「影野さ……!」

「……っ」

「あ、っ、ま、待ちやがれ!」



待ち焦がれていた、あの黒い影が、そそくさと逃げていく。

逃がすものかと全速力で追いかけた。


ぱちん、とヘアゴムが切れた音がした。


野放しにされた長い髪が、ものすんごくうっとうしいし、今日に限ってやっぱ学ランだし。

でもいいよ。もはやどうでもいい。



俺だって、捜してたんだ、ずっと。