きみは溶けて、ここにいて【完】






 手紙の返事を書いて、森田君の下駄箱にいれる決心をするのに、三日もかかってしまった。

本当は、もらった次の日に出そうと思ったけれど、何か失礼なことを言っていたら、とか、誤字があったら、とか、色々なことを不安に思ってしまって、何度も見直しをしているうちに時間が経っていた。


 五回書き直した。

それでも、不十分な気がした。


だけど、待たせすぎてしまうことのほうが駄目なんじゃないかと思って、森田 影君からの手紙が下駄箱に入っていた三日後の放課後、皆が帰る前に急いで玄関へ向かって、ドキドキしながらも、森田君の下駄箱にこっそりと手紙をいれた。


まるで、ラブレターを投函する人みたいだったと思う。

緊張の度合いでいったら、たぶん同じくらいだっただろう。




 どれだけ見返しても、どこかに棘が混じってしまっているのではないかと不安になる。

自分にとっては何でもない言葉が、他人にとってはずっと先まで残るなんてことが、たくさんある。それが、とても恐くて、自信がなかった。


 だけど、口に出す言葉よりも、手紙で書く言葉の方が、傷つけてしまわないか、とか、言われて嫌な思いをしないか、とか、じっくりと考える猶予があっていいと思った。


 森田君の下駄箱に手紙を忍ばせた後、そのまま私は中庭の花壇へ向かった。


園芸部に所属している。活動は、花壇の管理と、時々、植物園へ行くだけの、なんともゆるい部活だ。



 今日は、私が水やりの日だ。


週に三日、朝と放課後の水やりを任されている。去年、デイジーをたくさん植えたから、きっと他の人からしたら面白みのない花壇になっているけれど、私は、菜の花畑とか、コスモス畑とか、同じ花がたくさん咲いている空間が好きで、だから、今の花壇の状態を気に入っていた。