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休憩時間中ずっと一緒にいた2人は、帰りがけ偶然隣を歩くことになった。


「クニヒコ君の家ってこっち方向だったんだね、全然知らなかった」


「俺も、ハルカちゃんの家が同じ方向だなんて知らなかったよ」


クニヒコは緊張を隠しながら答える。


2人の間にはカバン2つ分の距離があった。


「もしよかったら、帰りながら歴史の勉強を教えてあげようか?」


「え、良いの?」


「もちろん!」


クニヒコは教科書なんて取り出さなくてもおおまかな歴史のことは頭の中に入っている。


ハルカに質問されたところを記憶の中から掘り出して、それを口に出すだけでよかった。


「さすがだよね。教科書で調べなくても全部覚えているなんてすごいよ」


「へへ。昔から記憶力はいいんだ。だから数学とかは全然ダメ」


「数学は私も苦手だよ。いいなぁクニヒコ君は1つでも得意科目があって」


ハルカが心底羨ましそうに言うので、休日勉強会をしないかという誘いが喉まで出かかった。


ハルカと一緒の時間をもっと作りたかったし、好きな子と一緒に受験勉強ができたら最高だ。


そう思って口を開きかけた時、大きな川に行き着いた。


クニヒコはいつもこの橋を渡って帰っている。