それからクニヒコはなんだかアパートの部屋にいたくなくて、気分転換に外に出てきていた。


この周辺が当時沼だったなんて信じられないくらい、人々の生活がある。


行くてもなく散歩しながらも思い出すのはさっきの猫のことばかりだ。


歩いていても野良猫の姿は見当たらない。


10匹の猫たちが押入れの中から出てきてどこかに消えてしまっただなんて、もしかして夢を見ていたんだろうか?


近所をグルリと歩いてアパートへ戻ってきた時、ちょうど隣の家の玄関が開いた。


「あ、はじめまして」


隣の部屋から出てきた女性と視線がぶつかり、軽く頭を下げて挨拶をした。


「はじめまして、昨日引っ越してきた人かな?」


「はい、そうです」


クラスの女子以外の異性と会話することなんてほとんどないクニヒコは緊張して頷いた。


「私はカオリ。よろしくね」


差し伸べられた手を握りしめるとともて柔らかくてすべすべしている。


ドキドキする気持ちを押さえてクニヒコはカオリにさっきみた出来事を話して聞かせた。


なにか知ることができるかもしれないと考えたのと、もう少しカオリと会話してみたいと思ったからだった。


「そう、押し入れから……」