「ごめんな、勇任務中だろ。」

「いや、大丈夫。頑張れよ朔。」

いつも勇に報告や相談をすると必ず背中を押してくれる。今回の小百合の件についても真面目に聞いてくれた。


だが、僕は知らなかった。勇が不満を持っていることを。




小百合と僕は付き合っているが、まだまだお互い知らないことばかりである。

僕はそもそも高月朔というのは偽名だ。勇と出会った時に勇がつけてくれた。

彼女に僕たちのアジトのことも教えていないし、僕が何歳かも知らない。

きっと小百合がこんな僕と付き合うと決めたのは高貴さんと何かあったからなのだろう。

だが僕は尋ねることができない。

逆に僕のことについて聞かれるのが怖いからだ。

僕は逃げている。このままだとずっと小百合に嘘をつくことになってしまう。

だが、普通言えるのだろうか。こんな状況で。

自分は殺し屋で、殺した両親の娘に惚れてしまうなどなんて最悪なシチュエーションなんだ。

彼女は勘がいい。きっと僕が何かを隠していることくらいは気づいているだろう。

それでも何も聞いてこないのは、まだ彼女と距離があるからなのだろうか。


「小百合。」

「朔さん!、」

この日は丁度会う約束をしていた。

僕は自分が殺し屋であることも忘れてただデートを楽しんでいた。

そして帰り際に

「少し公園で話がしたい。」

彼女の口から放たれた言葉。僕は覚悟を決めて頷く。