私は、カートから本をとった後、思わずため息をつく。
なんで、こんなことをしているんだろう。その言葉は、発することはせずに自分の中で消化する。
「新城さん、どうかした?」
そんな私を心配したのか、彼女はそう言って私の肩を叩いた。
突然のことに、私の肩がびくりと揺れた。
「何が?」
「いや、手止まってたから。体調でも悪いのかと思って。」
彼女はそういうと、心配そうに眉を下げた。私は、一瞬自分の手元にある本を見た後、また彼女に視線を戻した。
私と同じ年齢のはずなのに幼く見える顔立ちと、華奢な体。
腰まである黒髪を高いところで一つに結んでいる彼女。
私は、そんな彼女を初めて見た時は、同い年だときずくことはできなかった。
「そっか、心配してくれてありがとう。でも、ちょっとぼーっとしてただけだから大丈夫。」
私は、彼女の誤解を解くためにそう言った後、持っていた本を本棚にしっかりと戻した。彼女はそんな私の様子を見て安心したように言った。
「そう?ならよかった。キツかったら休憩取ってね。」
「うん。ありがとう。」
私の返事を聞くと、彼女 須藤 遥は、私の近くに置かれているカートから本をとって、他の本棚へ向かった。