『いや、お前は絶対に来い!』


「え、なんでそんなに俺に来て欲しいの?」


『ほら…。
梢、すっげぇ広子の事嫌いだろ?
あの空気が、俺だけ耐えられねぇ。
お前が居たら、ちょっとはマシだろうから』


俺が居ても、あんまり変わらないと思うけど。


ちょっと、篤の気持ちは分かる。


篤の奥さんの梢ちゃんの、露骨に広子を嫌いって空気。


唯一、その空気に気付いてないのが未央ちゃんだけ。


そして、ナツキさんは、面白がって梢ちゃんを煽り、
成瀬さんは、その感じに全く興味が無さそうで、なるようになればいいって感じで。


俺と篤だけが、その空気におろおろとしている。


当の梢ちゃんと広子は。


初めの頃は、広子は梢ちゃんに話し掛けていたけど、
嫌われていると気付き、一切広子からも梢ちゃんに話し掛けなくなっていたな。



「だってさ、普通に旦那の元カノと一緒にそうやって集まるなんて、梢ちゃんにしたら嫌だろうし。
梢ちゃんが篤の元カノの広子が嫌いなのは仕方ないもんね」


『そうなんだけどよ…。
だから、俺も仲良くしろとは言わねぇけど』


「成瀬さんが、変なんだよな」


そう口にして、改めて思う。


成瀬さんの嫁である、広子。


広子は、俺の元カノで、篤の元カノで、ナツキさんの元カノで。


成瀬さんはその集まりで、
いつもそんな俺達に対して普通に話している。


『成瀬さんもそうだけど、
未央も、だよな…』


そう言われ、ナツキさんの奥さんの未央ちゃんは、
ナツキさんの元カノの広子と仲が良い。



「俺、そのバーベキューは、ちょっとパスする」


『あ?なんでだ?』


「なんか、色々疲れそうだから」


そう言うと、篤はそれ以上は誘って来なくて。



『また気が変わったら連絡しろよ』



そう言って、その電話は切れた。