「海宝、お前どういうつもりだ?」
俺達のテーブルの真横に篤は立ち、
海宝さんを睨むように見下ろしている。
「どうもこうも。
電話で話した通り。
久しぶりにこっちに来たから、ちょっと篤君とお話ししながら、お茶でもしたいなーって」
そう言って、篤を見上げる海宝さんは、挑発的で。
「あー、そうだった。
ケイから聞いてた。
篤君と親友の滝沢君は喧嘩中だって。
滝沢君には、昔の客とのトラブルで、
相談してたんだけどね。
もうそれも終わったから、帰ろうとしてた所なんだけど。
篤君、来るの遅いから」
篤がこちらに来た時点で、そうなのだとは気付いていた。
喧嘩中の、俺と篤を引き合わそうと。
俺と篤が絶縁してから、こうやって誰かが仕組んで篤に会いそうになった事は、何度かあった。
それは、共通の友人や後輩等で、いつも未遂に終わっていた。
まさか、この人の誘いでそれが起こるとは。
予想外で、油断からか、こうして篤と会ってしまった。
「滝沢君、ごめんね。
なんか騙すような事して」
「てめぇ、俺には謝らねぇのかよ?」
「篤君は、俺と篤君の仲だしいいでしょ?」
その海宝さんの言葉に、篤は凄く眉間のシワを深くしてるけど、
海宝さんの言葉の通り、二人の仲は遠慮がないのだろう。
「じゃあ滝沢君。
その件、任せる。
あ、その費用とかどうすればいい?」
「いえ。
電話一本で解決しそうな案件なので、サービスで処理しておきます」
後で、向こうの弁護士に電話しておこう。
「そう。じゃあ、ここは俺が払っておく」
そう言って、海宝さんは伝票を持って立ち上がった。
そして、レジに行き支払いを済ませると、
颯爽と店から出て行った。



