「……知ってるわよ」
「その人の名前、分かりますか?」
わたしは電話越しにそう尋ねると、中山和美は「……伊藤綾香」と答えてくれた。
「その伊藤綾香さんって、どこに住んでるか分かりますか?」
「知らないわよ! それを調べるのが、アンタたち警察の仕事でしょ!」
わたしがそう尋ねると、中山和美は声を少し荒げて、わたしにそう言ってきた。
「……すみません」
「早く陵を殺した犯人を見つけなさいよ!……じゃなきゃ、ずっとわたしが疑われるでしょ」
そう言って電話を切ったのは、中山和美の方だった。
「伊藤綾香……か」
わたしは一度署に戻り、前科者リストに伊藤綾香の名前がないかを確認した。
「……やっぱりいないか」
伊藤綾香。 一体彼女は、何者なのだろうか……。
わたしは再び伊藤綾香のことを調べるために捜査に出て、奥野陵の友人から、伊藤綾香の聞き出すことにした。
「すみません。 矢野翔悟(しょうご)さんですか?」
「そうだけど。アンタ誰?」
「わたし、こういう者です」
と告げた後、わたしは警察手帳を開いて見せた。



