「うーん……」

 財布やスマホがない以上、どこの誰なのか、身元も分からない。
 どうやって調べよう……。

「笹野、お前日向と現場周辺の聞き込みに行ってくれ」

「え!?」

 ひ、日向と……!?

「なんだ?」

「い、いえ……! 分かりました」
 
 わたしは少し離れた所にいる日向に、声をかけた。

「上林警部補。お疲れ様です」

「……お、お疲れ」

 日向はわたしの態度に若干、驚いていた。

「小野田課長から、神警部補と現場周辺の聞き込みに行けと言われました。 よろしくお願いします」

「……ああ、よろしく。 じゃあ行くか」

「はい」

 わたしは日向と一緒に、現場周辺の聞き込みへと向かった。
 そして向かっている最中、日向がわたしに「お前、なんだよさっきの態度」と言ってきた。

「え、何がですか?」

 敢えて敬語でそう問いかけると、日向は「その態度やめろ。なんか距離を感じる」と言われてしまった。

「距離って……。そりゃあそうですよ。だってわたし、新米刑事ですし」

「そういうのはいいから。普通に話せよ、昨日みたく」

「……じゃあ、そうするね」