「中山和美さん。……ですね?」

「そうだけど……」

 わたしはアパートのドアが空いた時に少し顔を覗かせて「突然すみません、警察です。 ちょっとお話、よろしいですか?」と問いかけた。

「……警察が、わたしに何の用ですか?」

 その女性は少し嫌そうな顔をしながら、わたしたちにそう問いかけてきた。

「中山さん、あなたに殺人容疑がかけられています。……ちょっとお話を伺いたいので、署までご同行、願えますか?」

「はぁ!?殺人っ……!?」

 新たな事件の捜査で浮上した被害者の恋人に話を聞くために、わたしと日向は被害者の恋人である中山和美の住むアパートへと出向いていた。
 中山和美と被害者の奥野という男性は、事件の直前に二人が口論していたという事実があったためだ。
 話によると二人はその時に別れ話をしており、金銭トラブルなどがあったために、関係が拗(こじ)れたのではないかとも言われていたらしい。

 その観点からわたしと日向は、被害者の恋人である中山和美に話を聞くことにした。
 中山和美は、その矢野という男性が亡くなったと聞くと、終始驚いているような表情であった。