何かを言いかけた日向だけど、わたしは気にせずそのまま署を出た。

「……さっき、何を言おうとしたんだろ」

 日向……。わたしはずっと好きだった、日向のこと。
 だけどその想いを伝えることが出来ないまま、結局警察学校を卒業してしまった。
 あの日からずっと後悔していた。日向に好きだって伝えられなかったことを。ちゃんと好きだったって伝えられたら、こんなに後悔しなかったハズのに……。
 だけどあれから四年。またこうして会えたことは、まるで奇跡だとさえ思った。

「……好きだって言ってたら、こんなに後悔しなかったのにな」

 あの時好きだって言ったら、日向はなんて言ってくれたのだろう……。
 その日は寝る時まで、ずっとそんなことばかり考えていた。
 


✱ ✱ ✱ ✱



 その次の日、一課で殺人事件があり、わたしは自宅から現場へと向かっていた。
 
「おはようございます」

「おはよう笹野。思ったより早かったな」

 現場へ到着すると、小野田課長がわたしを見るなりそう言ってきた。

「はい。たまたま近くにいたもので」

 わたしはそう言うと、そのまま現場へ足を踏み入れた。