「……っ」

「つぼみ……!!」

 遠くからわたしの名前を呼ぶ声が聞こえる。……日向だ。

「お願いだから、こんなことはやめて。……こんなの、間違ってる」

 わたしがそう言うと、坂巻は「うるせぇ……。黙れっ! 間違ってるのはお前らの方だろ!?」と強く言い返してきた。

「あなたは罪のあることをした。……それには間違いないでしょ」

 掴まれた腕と、向けられた拳銃が、今のこの状況の大変さを物語っている。
 本当はすごく怖い。すごく震えそうになる。……けど、警察官はこんなことで怯んだりはしない。

「俺はお前らのせいで、人生めちゃくちゃにされたんだぞ!? お前らのせいで、俺は……」

「だからって、こんなのは間違ってる」

 そう言うと、坂巻は「黙れ!黙らねぇと……。お前を本当に撃つぞ!」と言ってきた。

「っ……」

 緊張した空気が漂う中、門野さんは坂巻に「坂巻!その人を離せ!」と言葉を向けた。

「うるせぇ!黙れって言ってんだろ……!!」

 坂巻侑斗の要求は、何……? わたしを人質にしても、日向も門野さんも近くにいる。
 下手なことなんて出来ない。