「坂巻、銃を下ろせっ!」

「うるせぇ! こっち来んな!」

 強行犯係に配属されてから、一年半。いつも思う。
 なぜ事件は起きるのだろう。なぜ人は人を殺すのだろう……と。

「……坂巻、頼む。銃を下ろしてくれ」

 門野さんは構えた拳銃を、坂巻に向けたままそう言葉を放った。
 
「なんでだよ……。お前のせいだろ!? お前が、俺の人生を壊したんだよ……!!」

 坂巻侑斗(さかまきゆうと)。以前傷害事件を起こして、少年院に入っていたそうだ。
 そして出所してすぐの頃、坂巻は門野さんに会いに来たと東署へとやって来たのだった。
 そう、坂巻侑斗は門野さんが逮捕した張本人だった。 そして門野さんの顔を見るなり、坂巻侑斗は逆上し、近くにいたわたしを人質に取ったのであった。  

「っ……坂巻さん、こんなことはやめてください」

 わたしのこめかみには、坂巻侑斗がわたしから奪い取った拳銃が当てられていた。
 下手なことをすれば、わたしはここで撃たてしまう……。

「うるせぇ!女は黙ってろ!」

 そう言って再び、坂巻侑斗はわたしのこめかみに拳銃を向けてくる。