「それが何のことなのか、分からなかったんですけど……。そういうこと、だったんですね」
 
 奥さんは泣きそうになりながら、必死で涙を堪えていた。
 
「……申し訳ありませんでした」

 奥さんはその涙を流しながら、わたしたちに謝ってきた。

「……奥さん、顔を上げてください」

 わたしはそんな奥さんに、そんなことしか言えなかった。

「本当に……。申し訳、ありませんでした」

 その奥さんの涙を見て、わたしはすごく心が痛んだ。









「……いたたまれないな」

 結局犯人は亡くなっていたため、被疑者死亡という形で、今回の事件は幕を下ろした。

「奥さん……。ずっと一人で抱え込んでたんだね」

 そんなのは、辛くて仕方なかったと思う。

「……わたし奥さんの涙、忘れられない」

 奥さんがあんなに泣きながら謝って来たあの姿を、わたしは絶対に忘れない。
 ずっとずっと……忘れられない。

 今回の未解決事件が解決されても、遺族の悲しみや苦しみは、一生消えないんだ。
 どこかで、何かを背負って必死で生きていくことは、簡単なことじゃないから……。