わたしもそれ以上口にするのが苦しくなって、口を開けなかった。だけどその代わりに口を開いたのは、高野さんであった。
「あの、お母さん」
「はい……?」
「ここ最近、何か息子さんに変わったことなどはなかったですか?」
高野さんはクールな表情で淡々と、母親に向かって言葉を並べた。
「変わったこと……ですか」
「はい。どんな小さなことでもいいんです。 何か思い当たるようなことは、ありませんか?」
高野さんの言葉に母親は、少し考え込みながら黙っていた。
そして数分後、母親は何かを思い出したように「そういえば……」と口を開いた。
「何かあるんですか?心当たりが?」
すかさず問いかける高野さんに、母親は「事件と関係あるかは分かりませんが……。息子は以前から、誰かと電話でよく話していました」と答えた。
「誰かと電話を? 相手は誰なのか、知ってますか?」
「いえ……。その相手が誰なのかは、わたしも知りません。ただ……」
「ただ……?」
母親は何か言いにくそうな表情をしていた。
「……息子は、いつもその相手に向かっていつも、すみませんと謝っていました」



