そう言われて仕方なく、普通に話すことにした。

「笹野。あの遺体、身元の分かるものは所持していなかったんだよな?」

「うん、持ってなかった。 凶器もなかったから、犯人が持ち去ったか、どこかに捨てたかもしれない」

 わたしがそう言うと、日向は「そうか……。まずはあの人が誰か身元を突き止めよう」と言った。

「うん。 わたしはこっちに行く」

「じゃあ、俺はこっちへ」

「うん」

 わたしたちは二手に分かれ、捜査を始めた。

「すみません。警察なんですが……少しお話よろしいですか?」

「はい」

「あの、この人見たことありませんか?」

 写真を見せ、何人か近所の人たちに声をかけていくが「いいえ。知りません」などの返答ばかりだった。

「そうですか……。ありがとうございました」

 三十分ほど聞き込みをしても、まだ何も収穫はなさそうだった。

「笹野、どうだった?」

「ううん。こっちも全然ダメ……」

「そっちも収穫なしか……。しょうがない。一旦署に戻るか」 

「……そうだね」

 合流した日向とそう会話をし、一旦わたしたちは署に戻ることにした。