そんなことまで情報が回っているのかと内心驚いた。だから、あの場にいた令嬢のうちふたりは私に挨拶すら返さなかったのかと合点する。

 私は「あははっ」と笑う。

「ないですよ。私の母は、薬師でした。しかも、王都からずっと離れたセローナの。だから、公爵様と知り合うきっかけなんてありません」
「あら、そうなの? イラリオ様が連れていらしたからてっきり──」

 メアリ様は意外そうに目を瞬かせて何かを言いかけたが、そこで口ごもる。

「なら、何代か前のご先祖様が貴族の家で侍女をしていたのかもしれないわね。どちらにせよ、選ばれる可能性がないなら気が楽だわ」
「そうですね」

 メアリ様と話したら、なんだかとっても気分が軽くなるのを感じた。