■ 第10章 幼女薬師は今日ももふもふと騎士団をお助けします!

■ 第1話

 意識を取り戻したとき、最初に目に入ったのは心配そうに私の顔を覗き込むイラリオさんだった。

「……イラリオさん?」
「エリー。エリー!」

 いつもの凜々しい顔を崩してどこか泣きそうな表情のイラリオさんは、感極まったように私の名前を呼びぎゅっと体を抱きしめる。
 イラリオさんに抱きしめられると、なぜかとても安心するのを感じた。

(あれ、私って……)

 そこまで考えて、気を失う前の記憶が甦る。
 私はイリスに呼ばれて行ったアメイリの森で、獣に襲われるイラリオさんを見たのだ。

 混乱してイラリオさんを助けてほしい、もう魔獣なんて現れないように神聖力の結界を回復させてほしいと強く願った瞬間、起ったのは摩訶不思議な出来事だった。
 幼児化していた私の体は元の十八歳に戻り、私の目の前に現れたのは不思議な男性だった。

『おかえり、我が娘よ。祈りを』

 確かにあの男の人は、そう言った。

(あれは、やっぱりお父さんなのかな?)

 遠い記憶の中でお母さんと一緒にいた、綺麗な男の人。まるであの日から全くときが経っていないかのように、男の人は同じ姿をしていた。