(何で精霊さんに返事をしてあげなかったんだろう?)

 まさか聞こえていないのかと思ったけれど、聖女であるルイーナ様に聞こえていないわけはないと思い直す。
 きっと、長旅の直後で返事するのも億劫なほど疲れていたのだろう。

 聖堂の奥の礼拝用の椅子にヴィラム殿下やイラリオさん達が座ってゆく。ブルノ大司教は祭壇の脇に立ち、祭壇の中央に進んだのはルイーナ様だった。

 ルイーナ様が祈りを捧げる。
 すると、聖堂の中にいる光の精霊達がそれに応えるように祝福の光を振りまいた。聖堂内に無数の煌めきが舞い、周囲に降り注ぐ。

「さすが聖女様だ」
「素晴らしいわ」

 私と並んで聖堂内を窺っていた見物人が、感激したように語り合う。ブルノ大司教が、祈りを捧げ終えたルイーナ様に向かって頭を下げているのが見えた。

 けれど、私は別の意味で驚いていた。

(聖女様の神聖力って、あんなものなの……?)