(ふーん……)

 なんだろう。なんとなく面白くない。
 聖女候補だったときの私には一度もあんなことしなかったのに。

 ヴィラム殿下と聖女様の到着とときを同じくして、セローナ大聖堂の扉が開け放たれる。中から出てきたのはブルノ大司教だった。ブルノ大司教も丁寧に腰を折り、ヴィラム殿下とルイーナ様に挨拶をしていた。そして、一堂は大聖堂の中入ってゆく。

(もしかして、礼拝をしてくれるのかな?)

 聖女の礼拝は結界を強力に維持する効果がある。最近神聖力の結界が弱まっているセローナ地区にとって、とてもありがたいことだ。

 私はザグリーンと共に大聖堂の入り口に近づく。入り口の警備をしていた顔見知りの騎士さんに中に入ることは止められてしまったけれど、そこから中を眺めることに関しては何も言われなかった。開け放たれた両開きの扉から見える大聖堂の内部には、今日も光の精霊達が飛び交っていた。

[こんにちはー]

 光の精霊がルイーナ様に大きな声で話しかける。けれど、ルイーナ様はそれに答えることなく無視して素通りした。