朝起きた私は準備を済ませると、慣れない場所で少し緊張する心を落ち着かせるように、両手を胸の前で組む。
(お父さん、お母さん、なんだか大変なことになっています。でも、イラリオさんによると聖女じゃないとわかればすぐに家に帰れるそうです。無事に帰るまで見守っていてください)
心の中で、既に他界した両親へと話しかける。
幼い頃から欠かしたことのない、毎日の日課だ。きっとお父さんとお母さんは、遠くから私のことを見守っていてくれていると信じている。
そのとき、窓際をコンコンと叩くような音がして私ははっとする。そちらを見ると、一匹の黒猫が窓を叩いているのが見えた。
「イリス!」
そこには、イリスがいた。
イリスは私が物心ついた頃から飼っている、不思議な黒猫だ。飼っていると言っても、気まぐれにいなくなってはまた戻ってくる自由な子だけれど。飼うと言うより、家族に近いかもしれない。
窓を開けてやると、イリスは部屋の中に入ってきた。ストンと床に下り、私の足下に擦り寄る。
「よくここがわかったわね」
「お見通しにゃ」
イリスは得意げに尻尾を揺らす。そう、これこそがイリスが〝不思議な猫〟たる所以だ。
なんとイリス、喋るのだ。
(お父さん、お母さん、なんだか大変なことになっています。でも、イラリオさんによると聖女じゃないとわかればすぐに家に帰れるそうです。無事に帰るまで見守っていてください)
心の中で、既に他界した両親へと話しかける。
幼い頃から欠かしたことのない、毎日の日課だ。きっとお父さんとお母さんは、遠くから私のことを見守っていてくれていると信じている。
そのとき、窓際をコンコンと叩くような音がして私ははっとする。そちらを見ると、一匹の黒猫が窓を叩いているのが見えた。
「イリス!」
そこには、イリスがいた。
イリスは私が物心ついた頃から飼っている、不思議な黒猫だ。飼っていると言っても、気まぐれにいなくなってはまた戻ってくる自由な子だけれど。飼うと言うより、家族に近いかもしれない。
窓を開けてやると、イリスは部屋の中に入ってきた。ストンと床に下り、私の足下に擦り寄る。
「よくここがわかったわね」
「お見通しにゃ」
イリスは得意げに尻尾を揺らす。そう、これこそがイリスが〝不思議な猫〟たる所以だ。
なんとイリス、喋るのだ。



