(貴族令嬢から見つかるってことは、絶対に私ってことはない気がするんだけど……)

 そもそも貴族じゃないし、実は貴族の血を引いているという話も聞いたことがない。物心ついた頃には既に両親はおらず、孤児院育ちだ。

「聖石が反応したのが何よりもの証拠だ。それと、俺のことは『カミーユ様』ではなく『レオ』でいい。様もいらない」
「え? でもカミーユ様は貴族ですよね?」
「…………。俺は貴族じゃない」

 なぜか答えるまでに間があったことがちょっと気になる。けれど、イラリオさんの反応からこれ以上触れてほしくないことなのだろうと、聞くのは止めた。

(そういえば、セローナ地区って……)

「レオは、セローナ地区の聖騎士なのですよね? 私の母も、元々はセローナ地区出身なのだそうです」
「そうなのか? 名前は?」
「マノアです。マノア=エスコベド」

 イラリオさんは無言で首を横に振る。その名前に聞き覚えがなかったのだろう。母がその地を去ったのは私を産んで程なくした頃のようなので、無理もない。