■ 第8章 幼女薬師、万能治療薬エリクサーを作る

■ 第1話

 それは、いつものようにアルマ薬店の手伝いをしているときだった。

 お客さんも少ないのでカミラさんと薬棚の在庫整理をしていると、血相を変えたスティムさんが駆け込んできた。スティムさんはセローナ大聖堂に勤める司教のひとりだ。
 走ってきたのか、スティムさんは息を切らせており、栗色のくせ毛の合間から見える額には汗が光っている。

「カミラさん、エリー。大変だ! 今すぐに一番効く回復薬を」

 いつになく緊迫した様子に、私もカミラさんもすぐに只事ではないと感じ取った。

「そんなに慌てて、一体何があったんだい?」

 カミラさんは薬棚を整理していた手を止めて、スティムさんのほうへと歩み寄る。

「今日の午前中、大聖堂で──」

 スティムさんは答えながら、息を切らせる。