けれど、アルマ薬店では圧倒的に傷薬と消毒液、そして包帯の消費が激しい。聖騎士団の本部に隣接するように営業しているので、任務中に怪我をした団員達の薬をたくさん納品しているからだろう。

    ◇ ◇ ◇

「ねえねえ、イラリオさん。騎士団の人って、そんなにたくさん怪我をするの?」

 その日の夜、私はイラリオさんに騎士団の人達の怪我事情について聞いてみた。

「なんだ、突然?」

 夕食のポークソテーをナイフで器用に切り分けていたイラリオさんが怪訝な表情を浮かべる。
 ちなみにこのポークソテー、私の得意料理のひとつである。ソースの中にすりおろした生姜をたっぷりと入れるのが美味しくなる秘訣である。イラリオさんも気に入ってくれたようで、いつも『美味しい。エリーは天才だな!』とべた褒めしてくれるから作りがいがあるのだ。

「アルマ薬店の傷薬と包帯の消費が激しいなあと思って。チェキーナでアリシアお姉ちゃんのお手伝いをしていたときは、風邪薬が多かったわ」

 ああ、なるほど。とイラリオさんは頷く。

「俺達の任務の特性上、盗賊や暴れ者を拘束するときに多少の怪我はつきものだからな。訓練の際のちょっとした切り傷とかもあるし。あとは、アメイリの森で魔獣に遭遇したときはどうしてもけが人が多く出る。魔獣は強いから」